どこまでも牧場が続いているハイランドは、人よりもひつじのほうが多いところです。
そこに3匹のなかよしのひつじが暮らしていました。
のんびりのんきなノンキー。
頭が良くてまじめなマージ。
そして活発で足の速いラン。
平和で穏やかな毎日ではありましたが、変化のない日々・・・
少々退屈に感じてきたひつじたちは、ある日、
300kmほどはなれた町まで冒険し、人々の注目を集めようと計画をたてます。
ちょっぴりせっかちなランは、考えるより行動が先です。
とにかく自慢の足で、野を越え、山を越え、湖をわたって、誰よりも先に町に着いてしまいました。
ところが冒険のおかげで、ひつじとは思えないほどたくましい身体つきになったランは
持ち前の明るくハツラツとした雰囲気も手伝って町の人気者になりました。
テレビや雑誌にもひっぱりだこ。
どうやら、人々に注目してもらうことは結構簡単だったようです。
一方、頭のいいマージは、船に乗り、海から町をめざします。
航海している間に、知恵を絞り、頭を回転させて、人の役にたちそうなものをいっぱい発明しました。
町に着いてからそれらを港にならべると「こんな素敵な物は、人間にだって作れやしないよ。」と、人々は口々にこうつぶやきました。
発明品は瞬く間に人気商品となり、マージ自身も「時の人」、いえ、「時の動物」となり人々の注目の的です。
ところで、のんびりノンキーは、まだハイランドにいます。
何をしていいんだか、アイデアが全然浮かびません。
ひとりぼっちになってしまったので、すっかりやる気もなくしてしまい、とうとう身体の具合まで悪くなってしまいました。
いつも頼っていたマージやランもいなくなってしまったので心細いし、どん底の気分・・。
ついに動くことさえできなくなって牧草地に倒れこむと、
「ぼくには、何の取り柄もない。人のためになるどころか、一人で生きていくことさえできないじゃないか。」
と星空にむかってつぶやき、深い眠りについてしまいました。
翌朝、ノンキーは、人々のざわめく声で目が覚めました。
どうやら、町からハイランドツアーにやって来た観光客のようです。
こちらを見ながらみんなが笑顔で話しているので、耳を澄まして聞いてみます。
すると
「ありがたいね。こういうやさしいひつじの顔を見ると、何だかほっとして、いやなことなんかみんな忘れちゃった。」
と言っているではありませんか。
ノンキーは、うれしくてうれしくて・・・得意げに微笑んで、ひとりひとりを愛情深くじっと見つめました。
そこら中から「かわいいね。ありがとう!」の声が沸きあがり、牧場いっぱいに響き渡っています。
いつもと変わらない牧場の、いつもと変わらない景色。
でも今、ノンキーの目には、今までに見たことがないほど美しいハイランドが映っています。